日別アーカイブ: 2020年12月10日

「穴からの救出」

 

父のおつかいで、兄たちの安否を確かめるために長旅を続けてきたヨセフさんは、ついに遠くの方に兄たちの姿を見つけることができました。

普通の兄弟であれば、長旅に対する労いの時を過ごすことと思いますが、この家族においてはそうはいきませんでした。

父親の偏った愛を受けている憎き弟の姿を見つけた兄たちは、恐ろしくも悲しい考えを抱くことになりました。

「兄たちは、はるか遠くの方にヨセフの姿を認めると、まだ近づいて来ないうちに、ヨセフを殺してしまおうとたくらみ、相談した。『おい、向こうから例の夢見るお方がやって来る。さあ、今だ。あれを殺して、穴の一つに投げ込もう。後は、野獣に食われたと言えばよい。あれの夢がどうなるか、見てやろう。』」(聖書 創世記37:18∼20 新共同訳)

父のもとから遠く離れた地において、弟の命を奪ってしまおう。しかも、長旅の中で獣に襲われたと言えば父親も不思議に思うことはない。兄たちは弟を憎むあまりそんな恐ろしい計画を相談し合ったのでした。

そんな中で、唯一長男のルベンさんだけは反対の意を示しました。そこでヨセフさんは、まず水が空になっていた貯水穴に投げ入れられました。ルベンさんは後でこっそり助け出そうと考えていたようでした。

すると、次に兄弟のユダさんが新たな提案をしました。

「弟を殺して、その血を覆っても、何の得にもならない。それより、あのイシュマエル人に売ろうではないか。弟に手をかけるのはよそう。あれだって、肉親の弟だから。」(聖書 創世記37:26 新共同訳)

そして、兄弟たちはヨセフさんを穴から引き上げて奴隷商人へと売り飛ばしてしまったのでした。奴隷になることは、死ぬよりも恐ろしいと思われていたようです。どうやらこの時ルベンさんは席を外していたようで、それを止めることができませんでした。

しかし、この奴隷商人が通りかかったことによって、ヨセフさんは命が助かったのでした。人間的に見れば、恐ろしい道へ足を踏み入れたように見えますが、これもヨセフさんを導く神様の大きな計画の中にあることでした。神様がヨセフさんを通して示された「夢」は、未来を預言しているものでした。神様の預言は、人間の力によって頓挫することはありません。