日別アーカイブ: 2021年6月18日

「身代わり」

 エジプトからの帰り道、突然呼び止められ、全く身に覚えのない窃盗容疑をかけられた兄弟たちは、身の潔白を主張しつつ荷物の中身を提示することになりました。

 執事が年上の者から念入りに調べ始め、いちばん最後に年下の者になったとき、ベニヤミンの袋の中から杯が見つかった。 (創世記 44:12新共同訳)

 末の弟ベニヤミンとは、父が愛してやまない存在であり、絶対に危険にさらすことなく連れて帰ると約束をしてエジプトに連れてきたという経緯がありました。

 そこで、兄のユダさんが口を開きました。

ユダが答えた。「御主君に何と申し開きできましょう。今更どう言えば、わたしどもの身の証しを立てることができましょう。神が僕どもの罪を暴かれたのです。この上は、わたしどもも、杯が見つかった者と共に、御主君の奴隷になります。」(創世記 44:16新共同訳)

 全員で奴隷になります。これがユダさんの嘆願でした。しかし、その願いも空しくヨセフさんからこんな言葉が返ってきます。

ヨセフは言った。「そんなことは全く考えていない。ただ、杯を見つけられた者だけが、わたしの奴隷になればよい。ほかのお前たちは皆、安心して父親のもとへ帰るがよい。」

(創世記 44:17新共同訳)

 実は、これがヨセフさんが最後に仕掛けた兄たちへのテストでした。そして、その最後の難題でした。

 末の弟だけを残し、後は家に帰るように。父との約束がある手前、そんなことはできません。そして、ユダさんは長い嘆願の言葉を述べ、最後にこう願い出ました。

実は、この僕が父にこの子の安全を保障して、『もしも、この子をあなたのもとに連れて帰らないようなことがあれば、わたしが父に対して生涯その罪を負い続けます』と言ったのです。 何とぞ、この子の代わりに、この僕を御主君の奴隷としてここに残し、この子はほかの兄弟たちと一緒に帰らせてください。(創世記 44:3233 新共同訳)

 この子の代わりに自分が奴隷となる。そして、この子は父のもとへ返してほしい。これがユダさんの最後の願いでした。本当に弟のことを愛していなければこんな申し出をすることはできないのではないかと思います。

 イエス・キリストは、私たちの代わりに十字架でその罪を負ってくださいました。それは、私たちが罪の奴隷から解放され、父なる神様のもとへ帰ることができるようにするためです。