「欺かれて気づく」

妻と息子の策略により、長男を祝福したつもりが次男にその祝福を与えてしまったことにより、世界で最初のオレオレ詐欺にかかってしまった父イサクさんでした。

声の違いに違和感を覚えつつも、自分の望み通りに長男のエサウさんに長子の特権を与えることができて一安心したイサクさんのもとに、狩りに出ていた本物のエサウさんが現れました。

「父イサクが、『お前は誰なのか』と聞くと、『わたしです。あなたの息子、長男のエサウです』と答えが返ってきた。イサクは激しく体を震わせて言った。『では、あれは一体誰だったのだ。さっき獲物を取ってわたしのところに持って来たのは。実は、お前が来る前にわたしはみんな食べて、彼を祝福してしまった。だから、彼が祝福されたものになっている。』」(聖書 創世記27:32∼33 新共同訳)

イサクさんは、自分が何とかして達成しようとしていた望みであった長男のエサウさんに長子の特権を与えるという計画が全て崩れ去ったことを知りました。

この祝福は、「間違えたからやっぱり取り消し」ということができるようなものではありませんでした。

欺かれたとしても、それを与えてしまったことを変更することはできません。この出来事を目の当たりにし、絶望に浸る父と子でした。

しかし、それと同時に父の心に神様の約束が思い出されました。それは、祝福を受けるのは長男ではなく次男のヤコブであるというものでした。

何とかして長男にそれを与えたいという自分の願いを突き通そうとしてきましたが、この絶望に思える出来事を通して、神様の約束は確かに成し遂げられるということを改めて知ることになったのでした。