「自分の力ではなく」

伯父のラバンさんの策略により、レアさんとラケルさんの2人と結婚することになったヤコブさんでしたが、やはりヤコブさんにとっての本命は妹のラケルさんでした。そのことが一夫多妻の家庭に争いをもたらしました。

姉のレアさんは、子どもが生まれる度に「これで夫は私を愛してくれる」という思いを抱きました。そして、レアさんには4人の男の子が産まれました。

しかし、妹のラケルさんには子どもが与えられませんでした。そのことを切っ掛けに「ラケルは、ヤコブとの間に子供ができないことが分かると、姉をねたむように」(聖書 創世記30:1 新共同訳)なりました。

そして、ヤコブさんに向かってこのように嘆きました。「わたしにもぜひ子供を与えてください。与えてくださらなければ、わたしは死にます」(同30:1)。

愛する人からそんなことを言われたヤコブさんはとても複雑な気持ちだったのではないかと思います。ヤコブさんはラケルさんに言いました。

「わたしが神に代われると言うのか。お前の胎に子供を宿らせないのは神御自身なのだ。」(聖書 創世記30:2 新共同訳)

この後、レアとラケルの姉妹は、どちらが多く子どもを産むかということをステータスとして、自分たちの女奴隷も巻き込んでの争いが勃発しました。結局、ラケルさんには子どもが与えられないままでしたが、最後に神様はラケルさんの願いを聞き入れ、1人の男の子を与えてくださいました。

もしかすると、子どもが与えられず姉との争いを繰り広げていた時には、それは神様が与えてくださるんだということなど忘れてしまっていたかもしれません。しかし、ヤコブさんの言ったように、それは人間の力や人間の都合ではなく、神様が与えてくださるものです。

ラケルさんは、本当に苦しんだ中で神様から与えられた尊い息子を見て、このように言いました。「神がわたしの恥をすすいでくださった」(聖書 創世記30:23 新共同訳)