「誘惑者」

エジプトの地で、神様と自分の主人に対して誠実に仕えて働いていたヨセフさんは、主人からの強い信頼のもと沢山のものを任されるまでになりました。

しかし、そんなヨセフさんを再びどん底に突き落とすような出来事が起こってしまいました。

ヨセフさんは仕事ができるだけでなく、「顔も美しく、体つきも優れていた」(聖書 創世記39:6 新共同訳)そうです。

このハンサムなヨセフさんに対して誘惑の言葉をかける存在がありました。それが、主人であるポティファルさんの奥さんでした。

その誘惑に対して、ヨセフさんはこのように返しました。

「ご存じのように、御主人はわたしを側に置き、家の中のことには一切気をお遣いになりません。財産もすべてわたしの手にゆだねてくださいました。この家では、わたしの上に立つ者はいませんから、わたしの意のままにならないものはありません。ただ、あなたは別です。あなたは御主人の妻ですから。わたしは、どうしてそのように大きな悪を働いて、神に罪を犯すことができましょう。」(聖書 創世記39:8∼9 新共同訳)

ヨセフさんは、自分を全的に信頼してくれている主人に対して、忠誠をつくしました。そして、何よりも、そのような誘惑を退けることによって、神様に対しても忠実であり続けたのでした。

この後、毎日しつこく声をかけてくるポティファルの奥さんでしたが、ヨセフさんは全く耳をかすことなく自分の仕事を忠実に果たしていきました。しかし、それにしびれを切らした誘惑者は強硬手段に出ました。

「彼女はヨセフの着物をつかんで言った。「わたしの床に入りなさい。」ヨセフは着物を彼女の手に残し、逃げて外へ出た。」(聖書 創世記39:12 新共同訳)

この、誘惑者の手に握られた着物によって、ヨセフさんはあらぬ罪を着せられて、今まで築いてきたものを全て失うこととなってしまうのでした。