「招き」

 兄たちの変えられた姿を目の当たりにし、ついに自分の身分を明かしたヨセフさんは、兄弟たちにこのように告げました。

 急いで父上のもとへ帰って、伝えてください。『息子のヨセフがこう言っています。神が、わたしを全エジプトの主としてくださいました。ためらわずに、わたしのところへおいでください。そして、ゴシェンの地域に住んでください。そうすればあなたも、息子も孫も、羊や牛の群れも、そのほかすべてのものも、わたしの近くで暮らすことができます。そこでのお世話は、わたしがお引き受けいたします。まだ五年間は飢饉が続くのですから、父上も家族も、そのほかすべてのものも、困ることのないようになさらなければいけません。』  (聖書 創世記 45:9-11 新共同訳)

 自分がここにいるのは、この飢饉の状況において家族を養うために神様が導いてくださったからだという信仰を言い表したヨセフさんは、その信仰に基づいて故郷にいる父親を自分のもとへ招待しました。

 それによって、父と共に兄弟の帰りを待つ家族、家畜、そしてそこで共に暮らす人たちが向こう5年の飢饉においても問題なく暮らせるように全てを整えると約束したのでした。

 しかし、この急展開に圧倒されていたのか、兄弟たちは恐らく思考停止していたのではないかと思います。

 そんな兄弟たちに、ヨセフさんはこう続けます。

さあ、お兄さんたちも、弟のベニヤミンも、自分の目で見てください。ほかならぬわたしがあなたたちに言っているのです。エジプトでわたしが受けているすべての栄誉と、あなたたちが見たすべてのことを父上に話してください。そして、急いで父上をここへ連れて来てください。」(聖書 創世記 45:12-13 新共同訳)

父親がこの話を聞いてどのように思うかはわかりません。もしかしたら、あまりの非現実的なことに信じられないかもしれません。しかし、ヨセフさんは、自分たちが見たことを伝えてほしいと告げました。

聖書には、私たちの想像をはるかに超える出来事が沢山記されています。中には、その出来事があまりにも非現実的すぎて中々信じることができないことがあるかもしれません。

しかし、そこに記されているのは、それを目撃した人たちの証言であり、神様はそれを通して私たちを招いてくださっています。