「逃げる」

弟に長子の特権を奪われた兄の悲しみは怒りへと変わり、その怒りは大きく膨れ上がり、そしてその怒りは殺意へと変わっていきました。

血のつながった兄弟であり、更には長らく待ちわびてやっと与えられた大切な2人の息子たちが命を狙い狙われるような関係になってしまったことに両親も心をいためたことと思います。

兄エサウさんの計画を知った母は、長子の特権を奪うために結託していた弟ヤコブさんに対し、逃げるようにと促しました。

そして、父は今から一人寂しい逃亡の旅へと出発する弟ヤコブさんに対して一つの命令を出しました。

その内容は、ヤコブさんがこれから結婚する相手を探すにあたってどのようにするべきであるかということでした。

兄のエサウさんは、避けるべき人たちとの結婚によって両親を悩ませていました。そのため、両親は、長子の特権を受け自分たちの家系を継いでいくことになる弟ヤコブさんには神様の御心にかなった結婚をしてほしいと願ったのでした。

そして、その命令とともに、今度は欺かれてではなく、弟ヤコブを改めて祝福しました。

「どうか、全能の神がお前を祝福して繫栄させ、お前を増やして多くの民の群れとしてくださるように。どうか、アブラハムの祝福がお前とその子孫に及び、神がアブラハムに与えられた土地、お前が寄留しているこの土地を受け継ぐことができるように。」(聖書 創世記28:3∼4 新共同訳)

命を狙われ、逃亡する直前になり、他人のふりをしてではなく、今度こそ正真正銘ヤコブという人として祝福を受けることができたのでした。

そして、ヤコブさんは逃げつつも父の命令に従い結婚相手を見つけるために伯父の所へ向かって行ったのでした。