「もう一つの教育」

生まれた時から命の危険にさらされていたモーセさんは、神様の導きによってファラオの王女に拾われ命を助けられました。更には、実母が乳母としての役割を任せられ、ある年齢に達するまでは家族と共に過ごすことができる道が開かれました。

 そこまでの出来事が、聖書の別の箇所にも記録されています。

それは、ヨセフのことを知らない別の王が、エジプトの支配者となるまでのことでした。 この王は、わたしたちの同胞を欺き、先祖を虐待して乳飲み子を捨てさせ、生かしておかないようにしました。このときに、モーセが生まれたのです。神の目に適った美しい子で、三か月の間、父の家で育てられ、その後、捨てられたのをファラオの王女が拾い上げ、自分の子として育てたのです。(聖書 使徒言行録 7:18-21 新共同訳)

 そして、いよいよ家族のもとを離れ、エジプトの中心地であるファラオの王女のもとへと生活の拠点を移すこととなりました。

 そこでの生活についても聖書に記録されています。

そして、モーセはエジプト人のあらゆる教育を受け、すばらしい話や行いをする者になりました。(聖書 使徒言行録 7:22 新共同訳)

 実母のもとで信仰の教育を受けたモーセさんは、エジプトの中心地においてエジプトの王家の後継ぎとしての教育を受けることとなりました。

 モーセさんが受けた教育は、政治的なことや軍事的なことなど国のリーダーになるために重要な内容であり、高いレベルのものでした。

 しかし、その教育の中にはエジプト人の信仰する宗教に関するものも含まれていました。母から唯一の神様を礼拝することを教わってきたモーセさんにとって、エジプトの宗教を受け入れるということはできませんでした。

 本来ならば、エジプトの国を担う存在として赦されざることであったことと思います。しかし、モーセさんはそのような周囲の声やエジプトの教育を受ける中でも信仰にかたくたって歩んでいきました。

 そんな中、モーセさんはエジプトで苦しむ同胞を救い出すという使命を果たすために機会を伺っていました。